ののわ

東京のまん中にあるライフスタイルを考える

地域の魅力を共有し、
暮らし方や働き方を見つめ直すことで、
この地域ならではのライフスタイルを探っていきます。

記事詳細

社会人となって2年目、人生に迷いつつ自らの学びの場を求めて、仲間とともにシブヤ大学を立ち上げた左京泰明さんと、地域コミュニティの創造をテーマに、30年にわたってさまざまなワークショップを企画・運営している齋藤啓子さんが、地域で学ぶことの豊かさや、人と人の出会いの可能性を熱く語り合いました。

ののわトークセッション

第8回ののわトークセッション公開対談『地域で学ぶ』

地域とかかわる

左京 シブヤ大学を開校して8年になります。20~30代の人がたくさん集まるようになり、次第に地域に目が向くようになって、地域のお祭りにもかかわるようになりました。

都市におけるコミュニティが希薄化しているから祭りにかかわる、というのではないんです。たとえば、商店街のおじいちゃんが地域の祭りを続けたいと思っているけど、担い手が少なくて困っている。あるいは、自分が働いている渋谷で祭りの運営に携わることができたら、今の暮らしがより豊かになる。僕たちはそんな思いで祭りに参加しながら、地域で学ぼうとしています。

齋藤 シブヤ大学ができたとき、私は〝やったぁ〟と思ったんです。

というのは、30年前に市民対象の美術のワークショップをやったとき、受講生たちが修了後に自主的な学びの活動を始めようとしました。でも、公共施設は区民でないと借りられないなど、使用の制限があり、自由に利用できる公的な空間が意外と少なく、自分たちがやりたいことを実現するためのハードルが、今より高かったのです。

ところがシブヤ大学は、街全体をキャンパスに見立てて、自分たちがやりたいことをやっている。そういうことができる時代になったんだとリスペクトしました。

左京泰明(さきょう やすあき)
特定非営利活動法人シブヤ大学学長。1979年、福岡県生まれ。早稲田大学卒業。住友商事株式会社、特定非営利活動法人グリーンバードを経て、2006年9月、特定非営利活動法人シブヤ大学を設立。シブヤ大学を立ち上げるまでのいきさつは、著書『シブヤ大学の教科書』(講談社)に詳しい。他著に『働かないひと。』(弘文堂)。

学びの場をつくる

左京 シブヤ大学には、現在2万人近くが学生登録しています。それだけ多くの人が集まるというのは、社会環境の変化があると思うのです。

働き方1つとっても、組織の中の個人という立場より、自分のやりたいことは何かと考えたり、組織の外で学びながら自分自身を成長させることが求められる時代になりました。

個人が社会の流動化に対応するには、即、転職するとかでなく、いろいろな情報を集める。あるいは自分を振り返りながら、いろいろな人の生き方、価値観を知ろうとする。それがシブヤ大学に参加する人たちの、「学び」の根本的な動機になっていると思います。

齋藤 シブヤ大学には全国に姉妹校がありますよね?

左京 僕たちが始めたことが1つのメッセージとなって全国に伝わり、「いいね!」となったのだと思います。

地域をキャンパスに見立てるとか、生徒が先生になったりするなどの手法が、同時代を生きている多くの人々の思いと重なったのでしょう。

齋藤 学びのスタイルは、多様性があるからこそおもしろいと実感しています。大学でも、丸くなって座ったりチームに分かれたりと、講義スタイルも新しくなってきました。

だれかがつくった学びの場に勉強に行くだけでなく、学びの場を自分でつくるとか、1人じゃないほうが楽しいとか、そういうことが多くの人に認知されるようになってきたこともあるのではないでしょうか。

左京 そうですね。シブヤ大学もそうですが、姉妹校には、行政のまちづくり事業とつながっているところが多いのです。若い人にまちづくりに関心をもってほしい、地域で学ぶ市民と連携しながら、まちづくりを進めてほしいという、行政の側からのアプローチがあるからだと思います。

齋藤啓子(さいとう けいこ)
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科教授。1956年、福島県生まれ。武蔵野美術大学大学院修了後、母校で非常勤講師を務める傍ら世田谷区専門調査員として、地域コミュニティの創造をテーマにしたワークショップの企画・運営・記録に携わる。2004年、武蔵野美術大学教授就任。大学と地域を結ぶ造形・表現活動のワークショップなど、幅広いフィールドを対象に活動している。著書に『やさしいまちづくりデザインノート 1~7』(世田谷区)など。
http://profile.musabi.ac.jp/page/SAITO_Keiko.html

「コモン」という考え方

齋藤 地域に暮らしている人は、そこに住んでいるだけでなく、仕事のキャリアがあったり、子育てや介護の経験があったりして、ひとりひとりの体験がとても貴重です。大学の外に出ていくと、学生にとって学外で出会う人はだれもが専門家であり、先生です。地域のお母さんは「お母さん」という専門家で、先生なのです。

左京 市民は自分のことだけを考え、行政のことは行政にまかせっきりのライフスタイルでは、パブリックとプライベートが完全に分かれている。あるいは、プライベートとパブリックとのかかわり合う領域がほとんどなくなると思います。そこをもう一度、パブリックの領域に市民がかかわり直す。パブリックの領域だけではなく、コミュニティというか、プライベートにかかわる領域も市民の手でつくる活動が大切になってきますね。

齋藤 パブリックでもプライベートでもない領域は、「コモン」と呼ぶようですが、コミュニティがうまくいっているところは、コモンがうまく機能しているといわれます。

左京 なるほど!

齋藤 ちょっと昔の地域社会はパブリックの力が弱かったこともあって、昭和の時代がバラ色に見えてしまうのは、今よりコモンがあったからではないでしょうか。地方から東京に出てきた人は、近くに頼れる人がいないから、子育てをするにも隣近所で助け合わないといけなかった。

今は、そういうコモンはなくなっているかもしれないけれど、地縁血縁でもなく、大家族でもないコモンの仕組み、新しい考え方が、もう一度必要になっているのではないでしょうか。シブヤ大学もコモンの1つだと思うし、多摩エリアでもこうした学びの場がもっと広がっていったらいいなと思います。

(構成・文:八田尚子)

<シブヤ大学>
2006年9月開校。特定の校舎はなく、「街が、まるごとキャンパス」を合言葉に、カフェや公園、区の施設、映画館など、街全体を「学び」の場として活用しながら、出会いの場をつくる。教える人と教わる人の垣根をとりはらい、あるときは生徒が先生にもなる「共育」システムをとっている。入学に必要な試験や資格、卒業年限はなく、参加費は基本的に無料。開校以来8年間に開いた講座は1000以上を数える。「学生登録」は渋谷在住・在勤にかかわらずだれでもでき、現在約2万人が登録している。
http://www.shibuya-univ.net

①シブヤ大学の姉妹校として札幌オオドオリ大学、東京にしがわ大学、大ナゴヤ大学、京都カラスマ大学、ひろしまジン大学、福岡テンジン大学、サクラ島大学、琉球ニライ大学が次々と開校し、全国各地にシブヤ大学のネットワークが広がっている。
②渋谷・円山町の料亭で開かれた「渋谷で守られる伝統文化」講座。
③Bunkamuraとのコラボによる「オープン!ヴィレッジ」では舞台が教室に。
④今年で4年目になる「恵比寿文化祭」(恵比寿ガーデンプレイス)はシブヤ大学で企画・運営。
⑤渋谷区の生涯学習振興課と連携して「写真の撮り方を学ぼう」講座などを開催。

<齋藤啓子さんの活動>
1975年、世田谷区経堂に開設され、全国の「冒険遊び場」のさきがけとなった「こども天国」の運営に、大学在学中にかかわったことが現在の活動につながっている。世田谷区「ふれあいのあるまちづくり」では、地域の障害のある人とかかわりながら、暮らしやすいまちづくりをデザイン。オーナー所有の家屋を地域のコミュニティ拠点として活かす世田谷区「地域共生のいえ」として、2007年にオープンした「岡さんのいえTOMO」の設立に参加。多摩地域では、子どもを対象とした造形演劇ワークショップなどの活動を行う。
岡さんのいえTOMO http://www.okasannoie.com

①世田谷から始まった「冒険遊び場」は今では全国に広がっている。
②公衆電話ボックスは車いすの人にも使いやすいように実物大公開実験でデザイン。
③小田急線の高架化にともないバリアフリーの駅づくりを提案し、その後、他の路線にも反映されるようになった。
④地域の公民館と連携した造形演劇ワークショップ。
⑤戦後に建てられた木造住宅を改造し、コミュニティスペースとしてオープンした「岡さんのいえTOMO」は地域の学びの場となっている。

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