ののわ

東京のまん中にあるライフスタイルを考える

地域の魅力を共有し、
暮らし方や働き方を見つめ直すことで、
この地域ならではのライフスタイルを探っていきます。

記事詳細

『まちの見方』

街を新たな視点で捉える活動を続けている建築家、ミリメーターの宮口明子さんと笠置秀紀さん、そして中央線沿線に造詣の深い社会デザイン研究家の三浦展さんが、ののわエリアの街の特性とこれからの可能性について語り合いました。

ののわトークセッション

第1回ののわトークセッション公開対談『まちの見方』

フィールドワークで見えてきたもの*1

宮口 「街フォント」は、街の風景から文字を集め、それを一文字ずつ切り取って街の書体をつくるプロジェクトです。以前、吉祥寺の街フォントをつくったのですが、ののわエリアではどんな違いが出るのか、やってみたいと思い行いました。

 次の「街の間取り」。私たちのプロジェクトで「MADRIX」という間取り柄のレジャーシートがあるんですが、それは昔、「ジベタリアン」という言葉が流行った頃、渋谷のセンター街で女子高生がカラフルなレジャーシートを敷いて座り込み、おしゃべりをしているのを見て「ここは彼女たちのリビングなんだ」と思ったのがきっかけでつくったものです。同じように「街」を自分の「家」に見立てて、自由に間取りをつくる。最後にその街の地図に間取りを描くのですが、一人一人のスケール感や居心地感が違っていて、おもしろい「街」が浮かび上がりました。

笠置 「街の会話」は、自分が街の壁になったつもりで、あちこちで交わされている会話を集めたものです。国分寺では家族同士のニュートラルな会話が多く、国立では国立らしさというか、上品な「私」を演出しているように感じました。まるで街にセリフがあるかのようです。

宮口 それぞれの街へ行ってみて思ったのは、駅前はどこも同じようなのに、15分も歩くと変わってくるんです。人形を飾ったり庭がよく手入れされていたり。個性的でのびのび暮らしているなぁと思いました。

笠置 僕は吉祥寺生まれなので、この周辺も少し馴染みはありますが、ふだん電車で通過している時と違って、歩く速度だと、街の解像度が上がって見えました。

三浦 街は人間の身体に例えることができると思うんですね。*2 街の骨格にあたるのは、地形や大きな幹線道路、神社や寺など、あまり変わらない部分です。肉付きとか体付き、顔付きにあたるのは、店、建物、人、看板、さらには街を歩く人たちの化粧、服なども含まれます。無数の要素から成るのです。それらの違いによって、人の顔が構造的には同じでも一人一人違うように、街の個性の違いが生まれる。

 ミリメーターの試みは、街を分解してその構成要素を探る、おもしろい試みだと思います。「街フォント」はホクロなのかな。

 例えば高円寺という街は、早稲田通り、青梅街道、環七という明確な骨格を持つ上に、肉付き、顔付き的な要素も非常に多様であり、それが高円寺の独特な個性になっています。各戸の郵便受けやアパートなどの階段を見ても、ニュータウンならどの家もほぼ同じなのに、高円寺では実に多彩なんです。

 ののわエリアに限らず、郊外の街に共通するのは、何となくボヤっとしていて骨格がわからない、発達中の感じなんです。郊外の街が互いに似てきてしまうのは、個性よりも利便性のほうを優先するからでしょうね。

 だから、僕はまず街の身体を鍛えましょう、と言いたい。同じような街にしたくなければ、自分の着たい服を見つけて、それを着こなす自分の身体をつくり、個性を表現することです。

笠置 それは僕らの街の見方と似ていると思います。いかに毎日を便利に過ごすかということばかり考えていると、街を見る視点が凝り固まってしまいます。このフィールドワークは街をつくる筋トレの準備体操のようなもので、ストレッチや整体に近いんです。街の構成要素に着目することで、背景となる街がふだんと違うように見えてくる。自分自身をほぐして、直感で街を感じることの大切さに気がついてほしいんですね。

ののわエリアはりっぱな「地方」である

三浦 中央線は地図の上では東京都を東から西に貫通する背骨のように見えるけれど、街を見るには厄介な存在です。実はこの地域には、青梅街道や五日市街道などの街道があって、それこそが背骨だった。そして、その周辺にこそ地域の長い歴史がある。

 また、古くからある川や池なども重要な資産です。杉並の和田堀、小金井のはけの道、国分寺のお鷹の道など、中央線からは遠いが、街の歴史、個性を考える上では重要です。

 これからは「都市*3を観光する」時代が来ると思うんですが、こうした歴史の多様な積み重ねと地理の関係を知れば、街をもっと楽しめます。

 ITの発達で、将来、会社に毎日通勤せずに自宅で仕事をする人が増えたら、そうした歴史や自然の豊富な街の価値は高くなりますよ。歴史や自然が人々をリラックスさせ、新しいヒントを与えてくれるからです。

 ののわエリアは「郊外」だと思うと衰退していく感じもするでしょうが、多摩という「地方」であると考えたら、ここでしかない暮らし方が考えられるはずです。コンクリートで護岸された川ばかりの地方都市よりも、草の茂る野川がある多摩の方が田舎らしさは勝っていると思います。吉祥寺には井の頭公園という、新宿にはない強みがありますよね。同じようにののわエリアも、自分たちの街の強みをもっと発見していくべきじゃないでしょうか。

笠置 同感です。歴史や自然の川は人工的につくり出せません。そういった意味でも、すでにある日常に目を向ける「都市の観光」はいいですね。そのためにも、僕らの街をもっと見なければ。今あるものをよーく見て、街の目利きとなる力を養わなければ、と思います。

三浦 中小企業や自営業、自由業が元気になるようにしたいですよね。西荻にはアンティーク店やギャラリーが多いですが、ものを売るだけでなく、そこで作品をつくったり修理していたりしています。昔はどこにでもあった、こういう手づくりの風景が、西荻の魅力なわけです。

三浦 展さん
社会デザイン研究者。1958年生まれ。一橋大学卒業後、ファッションと文化の情報誌『アクロス』編集長などを経て、カルチャースタディーズ研究所設立。地域に関する著書も多数ある。

これからの「ののわエリア」のライフスタイル

笠置 今まで武蔵境に住んでいたのですが、水が恋しくなって、最近、井の頭公園の近くに引っ越しました。住んでいるところは狭いですが、一歩足を延ばすと公園で、自分の庭のように感じられるようになりました。

 僕は「家」を所有するのではなく、「街」を所有したい。そこにはお金でない何かがあると思うし、自分たちの仕事としても、そういう街のつくり方をしていかなくては、と思っています。

宮口 引っ越してからいつも、公園の土の道を歩き、井の頭池の橋を渡り石段を登って出かけます。平坦な道よりハードにはなったけど、これは豊かだと感じました。

 武蔵境では駅前に大型スーパーがあってとても便利でしたが、今の家では、野菜一つ買うにも、どこに行こうか考えます。でも、そのちょっとした不便さが楽しいし、実は大事かも。そんなのんびりした暮らしが、このエリアではできるのだと思います。

三浦 これからは都心が国際都市としての性格を強めていくと思います。すると郊外は、もう少しゆったりと生きていきたい人たちが住み、かつ働く場所に変わっていくのではないか。ののわエリアが、そういうライフスタイルにふさわしい地域になっていけるかが、今後、問われていると思いますよ。

(構成・文:中野照子)

ミリメーター
宮口明子さん+笠置秀紀さん
建築家。2000年に活動開始。ミクロな視点と横断的な戦術で都市の内側からデザインしている。

*1  「ののわフィールドワーク」
 2012年の12月に始まったミリメーターの「ののわフィールドワーク」は、武蔵小金井、武蔵境、国立、東小金井、西国分寺、国分寺の6つの駅を基点に歩きまわって採集し、「街フォント」「街の間取り」「街の会話」を形にしてきました。住むところも年齢も異なる延べ51人の方が参加しました。

*2 それぞれの街に関する三浦さんの分析はおもしろい。ここでは紹介しきれないので、興味のある方は、以下の本を参考にしてください。
『吉祥寺スタイル 楽しい街の50の秘密』三浦展+渡和由研究室/文藝春秋、『高円寺 東京新女子街』三浦展+SML/洋泉社、『中央線がなかったら 見えてくる東京の古層』陣内秀信、三浦展/NTT出版、『郊外はこれからどうなる? 東京住宅地開発秘話』三浦展/中央公論新社

*3 三浦さんは「都会」と「都市」の違いを次のように考えています。
都会=ものの消費の場
都市=人の交流の場
それによれば「高円寺は都会的とはいえないが、都市である」といった具合です。

昨年3月に行なわれた「街の間取りフィールドワーク」の一場面。武蔵野プレイスを起点に、街を歩きながらリビングやキッチンなど家と同じような場所を探し出す試み

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