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スープ・カフェ「なんでもない日」
~温かな思いをスープに込めて~

 立川市にある根川緑道は小川の清流に沿って続く約1、3kmの遊歩道で、春には250本の桜が満開の花を咲かせ、秋にはカワセミの親子の姿が見られるなど季節ごとの風景を楽しめる。その緑道沿いに、まるで物語の中に出てくるような魅力的な佇まいのスープ・カフェ「なんでもない日」がある。

出店のきっかけは、散歩中の母の一言だった

 今から遡ること10年前、店主の中倉眞知子さんは今は亡き母とよく根川緑道沿いを散策していた。歩き疲れた母がよく「どこかこの辺に、ちょっと座ってお茶を飲める所があるといいのにね」と口にするのを耳にしている内に次第に感化されるようになった。それから程なくして、現在のカフェの前身の古い空き家を見付けて、持ち主の大家さんに手紙を書いて直談判したのが始まりだったという。

素晴らしい建築チームとの出逢い

 いざ出店が決まった所で、ネットを通じてすぐ近所の建築事務所と繋がりが出来た。そこで出逢ったのが一級建築士を目指して勉強中の内山昌太さんという若い男性だった。この内山さんが「以前、一緒に仕事をして意気投合したから」といって連れて来たのが、大工の棟梁の峯岸遼有さんだった。峯岸さんは奥多摩にある「黒茶屋」やあきる野にある「燈々庵」など、古い建築家屋を現代風に蘇らせるのを得意としており、中倉さんが借りた戦前の古い空き家を見て積極的な姿勢を示してくれた。

 設計に関して中倉さんが希望したことは「外と空気感が繋がっている感じにしてほしい」という一点のみだった。その希望に沿って窓を大きく取ったり、入り口のドアを開放したり、また店内に敢えて土を撒いてみたりと様々な工夫が成されたのだという。想像以上のお店の出来栄えに、「お二人との出逢いがなければ、こんな素敵なお店にはならなかった」と中倉さんは相好を崩す。

スープのメニューは前夜に考える

 中倉さんは毎朝5時~5時半の間に出勤をして、朝8時の開店に向けてひたすら野菜を刻む。朝一でカフェに来店されるのは常連さんがほとんどで、中にはGSの夜勤帰りの男性や早朝のビルの清掃係りの女性など、一仕事終えてから来られる方も何名かいる。お昼前の11時になると、あきる野市からのウォーキングの折り返し地点として、コーヒーとマフィンで小休止を取って行く方や、早めのランチを摂りに来る親子連れなど、幅広い年齢層のお客様がやって来る。カフェのお客様の内、約7割は常連さんだという。

 お店のメニューは一年を通してミネストローネスープとポタージュ、季節のスープのみで、それに黒米入りのご飯かパンのセットを選べるようになっている。単なるカフェでなく「スープ・カフェ」という業態にしたのは、「スープは料理の腕がなくても出来るから」と謙遜する中倉さんだが、付け合わせのピクルスや、しそジュースや梅ジュースなどの“季節のジュース”、酒粕から作る甘酒、さらにはマフィンや黒豆の乗った豆乳ゼリーなどのスイーツ類も全て手作りしているというから、その手マメさには感動させられる。

規格外の野菜を無駄にしたくないという思い

 スープ・カフェを開いたのにはもう一つ重大な訳がある。元来、野菜好きの中倉さんは以前、立川市の砂川町で畑仕事のお手伝いをしていたことがあった。その際に「見た目が悪い」などの理由で廃棄される“規格外”の野菜を見て、「刻んでスープにしてしまえば食べられるのに」と胸が痛んだのだという。

 現在、お店で使っているのは立川市にある「シロガネ農園」の有機野菜で、見た目の良くないB級品は積極的にお店で使うようにしている。また農園の方でも出荷できない野菜を取り分けておいて、サービスで届けてくれるので大いに助かっている。以前、強風で地面に落ちたグリーントマトをピクルスにしてお出しした所、お客様から「わざわざ、ヨーロッパからお取り寄せしたのですか?」と聞かれたこともある。

お客様同士のやり取りを眺めているのが幸せ

 お店は今年の4月でちょうど丸2年を迎えた。「ともかく、毎日、同じものを作り続けることが大変です」と言う中倉さんが一番喜びを感じるのが、お客様同士の和やかなやり取りを目にする時だという。初めて会ったお客様同士が意気投合して「まんぷくセット」のスープ2皿を分け合って食べたり、また若い男性が他のお客様にお水を入れて回してあげたりする様子を眺めていると微笑ましい気持ちになるという。

 「この2年間、夢中でお店をやって来て、自分としてはもっと目の前の景色を楽しむつもりだったのが、作ることに一生懸命で肝心の景色を楽しむ余裕がなかったですね」という中倉さん。そんな彼女の愛情たっぷりのスープやスイーツを求めて、これからもたくさんのお客様がこの水辺のスープ・カフェに集ってくるだろう。そして、そんな様子を天国にいる中倉さんのお母さんも優しく見守っていることだろう。

(編集/テキスト/撮影 伊藤万里)

【information】

スープ・カフェ「なんでもない日」
住所:立川市柴崎町4-11-4
電話:042-523-5114
最寄り駅:多摩モノレール「柴崎体育館」駅 徒歩2~3分
     JR「立川」駅 徒歩15分
※根川緑道沿い
営業日:水・木・金・土・日
定休日:月・火
営業時間:AM8:00~PM4:00
※スープはなくなり次第、終了。

伊藤万里(地域ライター)
普通の暮らしの中にこそ、多くの感動があります。日々、地域に根付いた美味しいもの、素敵な人たちとの出逢いを求めて、散策しています。好奇心の強さとフットワークの軽さが売りのライターです。

<気になるコト>
人が好き、小旅行、カフェ巡り、自然の中を自分の足で歩く、読書

※2016年5月23日現在の情報となります。

柔らかな緑が目に優しい“のらぼうのポタージュ”。

店主の中倉さんの優しい笑顔に癒される人も多い。

オリジナルの花瓶は、立川在住の陶芸家の大森良子さんの作品。

お店のテーブルも、大工の峯岸さんの手作りだという。

黒蜜がたっぷりかかった豆乳ゼリーもお店の看板メニューの一つ。

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