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記事詳細

~野菜でつながる地域と学生、大学~
法政大学農業サークル「あぐり」

大学の学食に安心・安全な地域の野菜を導入したい

 2008年、法政大学建築学科の3年生だった山中元さんは、そんな思いを抱いて仲間と4人で農業サークル「あぐり」の設立準備を開始した。当時、国内では毒入りギョーザ事件が発生し、食の安全に対する世間の関心が一気に高まっていた。
 従来の学食の食材は、大学生協東京事業連合による一括供給型の仕組みだったが、山中さんらは食材の地産地消を目指し、地元野菜を学食に取り入れる試みを行った。しかし、地元野菜の調達を実現する上で「少量で単価が高くなる」、「人件費が高くなる」といった課題に早速ぶつかってしまう。
 どうすればそれらの課題をクリアできるか。知恵を絞った末、小金井市内の個人農家の協力を得て、規格外のB級野菜を安く提供していただく代わりに農作業を楽しくお手伝いする仕組みを考えた。B級野菜は調理の手間のかからないサラダに使用し、学食のサラダバーに地場野菜コーナーを設置したのだ。
 2009年より正式にサークルとして発足した「あぐり」は、山中さんを含む10数名からスタートし、現在は部員数45名を数える大所帯に成長した。現役部員の入部の動機はさまざまだ。田舎の祖父母や親戚が農業をしており、子供の頃から親近感を抱いていたという人。植物医科学専攻で植物の病気を勉強しており、本に書かれていることを自分の手で触れ目で見て実体験したかったという人。土に触れることで他では味わえない癒しが得られたり、みんなで一緒に作業する楽しさを経験できていると話す。

 「あぐり」は、農家の畑での農作業と、学食宣伝活動を主な活動内容としている。
農作業は、週に5~6回部員でローテーションを組み、小金井公園にほど近い大堀耕平さんの畑で行われている。大堀さんの「大堀ファーム」は、江戸時代享保期の新田開発の頃より小金井の地で農業を営んでいる家族経営の農家だ。都市農業の特徴である多品種少量栽培を基本としながら、珍しい西洋野菜のルバーブと江戸東京野菜を両方育てているのは地域でも大堀さんだけだという。
 江戸東京野菜は、小金井市が市を挙げてまちおこしの一環として復活と普及に取り組んでいる東京の伝統野菜であり、「あぐり」も種まきから栽培の手伝いをしている。毎年11月に行われる大学祭では、江戸東京野菜を含めて収穫した野菜の販売と屋台での料理提供をしている。
 また、学食宣伝活動は、大学から助成金を受け、野菜の旬に合わせた学食宣伝スケジュールを練るというものだ。その他にも、表参道でのFarmer’s Marketや丸の内エリアで開催されるJAPAN FOOD FESTAに出店して農家の野菜販売の手伝いをするなど、その活動範囲は学外にも広がっている。

「あぐり」の活動をとおして得られたものとは?

 「地域とのつながりができたことが大きかった。それによって学外の世界にも目を向けることができ、社会性が培われて自信となった」とOBの山中さんは語る。現在、山中さんは木の建築の仕事に携わっており、生産者の顔の見える素材を大切に考えている。あぐりの活動をとおして物のありがたみや生産者への感謝の気持ちを体感し、その思いが現在の仕事にもつながっているという。
 また、現役の副部長の機械工学科2年・黒須遥介さんは、「人とのつながりができたことが収穫。専攻が機械工学のため、日頃の勉強の中では人とのふれあいが希薄になるが、あぐりは違う世界を体験させてくれた」と話す。黒須さんはこれまでに小金井市のタウンショップ「黄金や」のアルバイトや地域イベントの手伝いを経験し、地域への貢献にも目が向いている。
 山中さんから農作業ボランティアの申し出を受け、「あぐり」の学生を受け入れた大堀さんは、活動をとおして都市農業に対する若者の理解促進が図れたと感じている。また、学生たちに農業指導をすると同時に、草取りや片付けなど人海戦術が必要な場面では大いに助けられているという。昨今は政府の政策と農業者の高齢化や担い手不足が相俟って農地が年々減少しており、都市農業を取り巻く環境は決して明るいものではない。小金井市内においても、相続が生じるごとに農地が減り、現在5反(50アール=5,000平方メートル)以上の農地を所有する農家は数少ないとの話だ。大堀さんは語る。「学生が話していたように、みんなでやるから楽しいというのは農家も同じ。周りの農家仲間をこれ以上減らさないようにしたい」

「あぐり」のこれから

 現在副部長をしている黒須さんは、次期部長になるにあたり、地域とのつながりをさらに広げていきたいと考えている。「設立当初からの活動を継続するだけではなく、活動領域を広げて新たなことにもチャレンジしていきたい」そこでいま力を入れ始めているのが江戸東京野菜を使った料理レシピの研究・開発だ。大学祭で江戸東京野菜を販売すると、お客さんからどのように調理すればよいか尋ねられることが多いが、思うようにお勧めを紹介することができていないという。また、部員の野菜に対する知識を底上げするために勉強会もおこなっており、学内の学生にさらに地産地消の良さを伝えていくことを目指している。同時に、山中さんも黒須さんも共に「地域の農家が抱える問題に対してあぐりの活動が少しでもプラスの効果を生み出していけるようになれば」と語ってくれた。
 今後、「あぐり」の学生と農家・地域とのコラボレーションによって、小金井のまちも農業も盛り上がっていくことを期待したい。

(編集/テキスト/撮影 斎藤弘美)

【information】

「法政大学農業サークル あぐり」
http://site188650-4845-1292.strikingly.com/

「小金井 江戸の農家みち」 https://www.facebook.com/koganei.edononoukamichi
小金井公園のそばには農家の直売所が集まる「江戸の農家みち」がある。大堀さんの新鮮野菜もここで購入することができる。小金井公園や江戸東京たてもの園の散策とあわせてこちらにもぜひ立ち寄りたい。

斎藤弘美(地域ライター)
旅とまちあるきが好きなOLです。「ののわ」の活動に加わってから地域の素敵な人や面白い場所・おいしいものと日々出会っています。これからもさまざまな出会いを大切にしてこのまちでの暮らしを楽しんでいきたいです。

<気になるコト>
江戸東京野菜、長崎・五島列島、中央線沿線の名曲喫茶

※2014年11月20日現在の情報となります。

OBの山中元さん。学生時代より小金井のまちづくり学生団体「いがねこ」の活動にも参加し、地域活動に精力的に取り組んできた。

副部長の黒須遥介さん。「野菜をとおして学内・学外で新たな交流が生まれている」と語ってくれた。今後の活躍が楽しみだ。

法政大学小金井キャンパスにて。「あぐり」を立ち上げた山中さんの思いは確実に後輩へと受け継がれている。

「大堀ファーム」の大堀耕平さんと「あぐり」の部員の皆さん。

大根の間引き作業をする部員たち。

江戸東京野菜の「金町こかぶ」を収穫する様子。この畑では、他にも亀戸大根や馬込三寸人参など数種類の江戸東京野菜を栽培している。

11月1日~3日に行われた大学祭での研究展示と野菜販売の様子。部員の開発した江戸東京野菜の料理レシピも配布された。

大学祭の屋台ではポトフが提供された。部員たちが試作を繰り返した野菜たっぷりのあったかメニューだ。

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