ののわ

地域のみんなで探す 伝えたい"ののわ"

地域の人がライターとなり、自分のコトバで、
この地域の魅力を「発見」「発掘」「発信」していきます。

記事詳細

物語好きな二人がつくりあげる不思議で楽しい世界
~活版印刷からはじまった新たな物語~
酒井草平さん・葵さん

時を経て再び動きだした活版印刷機たち

 活版印刷*1、その言葉の響きに惹かれていた。ののわに参加し、地域のことを知るようになり、活版印刷の作品を制作する「九ポ堂」と出会った。求めていたものは、こんな近くにあったんだ。

 九ポ堂は、DTP*2、活版印刷による作品やイラスト制作を行う。店主の酒井草平さんのおじいさんが趣味で使っていた活版印刷機に、「銀河鉄道の夜」で読んだ活版印刷所に妙に惹かれたという奥さんの葵さんが光をあて、再び動き出した。修理から戻ってきて久しぶりに聞いた印刷機の音は草平さんにおじいさんの記憶を呼び覚まさせた。

 サイズや得意分野によって使い分ける5つの印刷機は、廃業した国分寺の印刷屋さんから譲ってもらった「ボードさん」や全自動の「デルマ」などそれぞれ愛称がついていてかわいい。高度な技を必要とする多色刷りなど、葵さんの作りたいポストカードを実現させる刷り師・草平さんは、活版印刷機のマシンそのものに魅力を感じるという。

「ツキアカリ商店街」など
9歳から99歳の人に愛される独特の世界観

 物語が好きな二人。国分寺で生まれ育った草平さんが子どもの頃見ていたものや、二人の何気ない日常生活からつむぎだした世界を「架空商店街」としてポストカードにつくりあげる。九ポ堂の作品は、かわいいだけでなく思わずふふっと笑みがこぼれてしまう独特のユーモアの世界が広がる。

 架空商店街シリーズの「ツキアカリ商店街」は夜道を歩いていて思いついたという。夜の世界を連想し、星を製造するパン屋さんや夜にだけ咲く花専門のお花屋さんなど、商店街に並ぶ9店舗11枚のカードを完成させた。
 架空商店街の世界観をより楽しめるのが「おはなし封筒」。封筒を開くと、商店街に並ぶ店のお話カードと、なくした風船をさがしてくれる「風船探偵社」の名刺や悪夢を散らす薬「悪夢散」の薬袋など、お話に登場するアイテムが入っていて本当に楽しい。本物感を大切にし、実際の薬袋や味わいを感じる手すき和紙に印刷され、その完成度に驚くとともにお話の世界に包まれドキドキする。いずれこれらを本にまとめたいと草平さん。

 「一部の人だけが楽しむものではなく、『ムーミン谷への旅』(講談社)の帯で出会った『9歳から99歳まで』という言葉のように、たくさんの人におもしろいと思ってもらえるものを作りたい」と葵さん。その言葉のとおり、九ポ堂の作品は小学生から年配の方まで広く愛されている。

九ポ堂にしかできないもので
地域とつながっていく

 「このあたりには自分のやりたいことを追求しこだわっている方が集まっているので、刺激し合えるのがいいですね」と葵さん。市内の喫茶店「クルミドコーヒー」が出版した本の印刷には、おじいさんの印刷機を使って一枚ずつ手作業で印刷し、初版の100冊に一カ月を要した。

 今後、大好きなハケ(国分寺崖線)の上にあるアトリエの一角をお店にし、手にとった時に活版印刷の風合いを感じるような紙雑貨の販売やワークショップ、グリーティングカードのセミオーダーなどを始めて、地域とつながっていきたいという。
 あたためている構想はまだまだあるという草平さんは「活版印刷は目的でなくあくまでも手段。活版印刷でなくてもおもしろいものを作りたい」と話す。

 気負わない自然体で果てしなく広がる空想力とユーモア、文章力、描かれるかわいいイラストなど才能あふれる草平さんと葵さん。お互いのことを理解し、刺激し合いながら九ポ堂にしかできないものを生みだし続ける楽しい二人の物語はこれからもつむがれる。

 国分寺から生まれるちょっと不思議で楽しい世界への扉、ノックしてみませんか。

*1 活版印刷:鉛の活字や凸版にインキをつけて紙に印刷する印刷技法。現在はオフセット印刷が主流
*2 DTP:デスクトップ・パブリッシングの略で、出版物のデザイン、編集などをコンピューターで行うこと

文:堀内(杉田屋)まりえ(地域ライター)
ののわ地域は私のふるさと。家族、友人、学校、大切なものがここにあります。どんどん楽しくなっているこの地域で、素敵な出会いと貴重な機会に恵まれ、大切な時を過ごしています。

写真:大野智嗣(地域ライター)
三鷹市にある写真館、フォトスタジオソラ代表。出張撮影を主とするため、より地域に密着した写真を求めてののわに参加。

※2014年6月20日現在の情報となります。

活版印刷による作品を制作する「九ポ堂」の酒井草平さん(右)と葵さん。作品はHPから購入可能。
九ポ堂=042-573-1641。http://www.kyupodo.com
おじいさんが使っていた印刷機「清水さん」。二人の物語はここからはじまった

架空商店街のポストカード。左から「ツキアカリ商店街」 の街並みと「雲乃上商店街」シリーズの「星屑リサイクル」と「夕焼けデザイン室」

お話とお話に登場するアイテムが入る「おはなし封筒」。封筒を開くとお話の世界がふわっと広がり、胸が高鳴る

文選(原稿に従って活字棚から活字を拾い、文選箱に納めること)は長年の経験が必要となる職人技。草平さんは活字の位置をデータに取り込んで管理する

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